- [2010-06-24]あたいの逆襲
- 兄貴はリビングのフローリングであぐらをかき、こっちへ来いと手招きしながらあたいを誘っている。完全に上目線の態度。それに兄貴が手にしているコーヒーカップからミルクのいい香りが立ち篭めても、餌で釣ろうとしている魂胆が許せない。でもね、あたいの鼻は鋭いんだよ。コーヒーが混ざったミルクコーヒーくらい簡単に判別できるの。あたいは怪しい目線を兄貴に浴びせながらそのままじっとしていた。
そういえばあたいがまだ赤ん坊の時のこと。同じように兄貴に騙されてなにかを飲んだら、数分たって腰が抜けた。悪戯でグラスの中に注がれていたのは、ビールっていう薬より苦い飲み物だった。あれだけ酔っぱらって千鳥足になったのは初めての経験。家族のみんなに笑い者にされたことが鮮明に蘇った。
コーヒーってやつもそうだけど、どうして人間って苦い飲み物を好むのだろう。あたいには、とうてい口に合うわけがない。それからはもう同じ過ちを繰り返さないと誓ったんだ。兄貴の悪戯にもつき合ってられない。
「おいでノン子ちゃん。牛乳だよ」
《まだ嘘を言ってる。それはミルクコーヒーでしょ。もう騙されないから》
あたいが身体を伸ばしてくつろいでいるところへ、兄貴が無理矢理こっちに近付いてきた。そしていきなり右手を差し出して「お手!」と叫んでいる。フローリングに膝をつき、体を前方に屈めながら目線をあたいに合わせて「お手」をするポーズ。はっきりいって哀れなアラフォー男の無様な格好だよ。あ~あ、お気の毒。
「お手は? お手」
《無視無視。これ以上しつこいと噛みつくからね》
あたいは兄貴に向かって大きなあくびをした。
「あっ馬鹿にしやがった」
《違う違う。放っといてっていう意味なの》
兄貴はあたいの頭を小突いてきた。眉間に皺まで寄せて怒っている。彼女がいないからってあたいのせいにしないでよ。なんであたいが殴られなきゃならないのよ。本当、意味不明。だから兄貴が嫌いなんだ。
なおも兄貴は執拗に頭を強く撫でてくる。決して子供をあやす時の「いい子いい子」をしている風には全く感じられない。それからあたいを裏返して腹の辺りを両手でさすってくる。気持ち悪くてあたいの背筋に虫酸が走り、ついに兄貴の右手中指を齧ってやった。
「いたたた。ノン子ちゃんが食いついた。こら! 駄目でしょ」
中指を振りながら痛さに耐えている兄貴。
《いい気味。ああ、すっきりした》
![]()
名前:T.Y
【趣味】競馬、野球、B級グルメ店開拓
【好きな馬】ジェニュイン(待受画面にしてます)
【好きな物】ビール、ビール、ビール
【好きなロッカー】浜田省吾
【好きな歌】浜省の「I am a father」(私自身父親ではない)
【マイブーム】ウコンのサプリメント摂取
※執筆者の社内でのイメージを絵にしました。





